ポンヌフの恋人

今日もさらに映画の話...

今日は「ポンヌフの恋人」だ。もうどこかに書いた気がするけど、この映画との出会いはまったくの偶然だった。その頃は最初に勤めた会社を辞めて、何もせずぶらぶらとしていた。なぜかは覚えていないが渋谷にいて、あてどもなく歩いてたら、突然、鐘の音が聞こえたのだ。そして、誰かが叫んだ。「間もなく上映開始です。今なら座ってご覧になれます」暇だった私は、その言葉に吸い寄せられた。どういう映画が始まるのかもまったく確かめずにチケット(当時は切符、という方がぴったりなものだった気がする)を買い、中に入っていった。その映画館は今はもうないと思う。

席に着くと、すぐに本編が始まった。ひたすらに暗い画面だ。ただ、その中に蠢くものが見える。クローズアップされる。人だ。道路に人がうずくまっている。やがて、それが浮浪者であることがわかる。パリの街にいる浮浪者。若い男だ...。

おそらく当時の私と同じくらいの年齢だろう。無職になり不安を抱えながらうろついていただけに、身につまされた。うわ、こんな映画、見なきゃよかった...でもお金も払ったし、今から出るのもな、と思い、我慢して見続けた。

そして、約1時間半くらい後、涙が止まらなくなった。感動なのか何なのか、まったくわからないけれど、涙でスクリーンが見えないほど。その後、何度も見返しているけど、やはり同じところで泣く。なぜ、泣くのか、いまだに自分でわからない。

そういう映画。