再会の街/ブライトライツ・ビッグシティ

さらにさらにさらに映画の話...

今日は「再会の街/ブライトライツ・ビッグシティ」だ。これはジェイ・マキナニーの小説が原作になっている。主人公が語り手なのだけれど、終始、主語がYouになっている。そういうことも含めて、小説の特徴がうまく映画に活かされているかというと、なんとなく中途半端な気もする。正直に言って、映画としては駄作なんだろうな、と察してはいるし、興行的にも失敗したみたい。バック・トゥ・ザ・フューチャーで人気絶頂の頃のマイケル・J・フォックスが主演したのにこけたのだからよほどのことだ。マイケルにとってこの映画は結婚相手を見つけた以外に良いところはなかったんじゃないだろうかと勝手に想像。日本ではDVD化もされていない。長年、レンタル落ちで買ったVHSテープから自分でダビングしたDVDを見ていた。最近になってようやくアメリカ版のブルーレイを手に入れた(DVDは日本とリージョンが違うのに、ブルーレイは同じなのだ、不思議)。

ヒットもしなかったし、出来も良くないとわかっているのに、この映画のどこがそんなに気に入ったのか。最初は感情移入をしたからだ。小説家になりたくて、そのきっかけをつかむために雑誌社に入ったけれど、校閲部に配属された主人公。そこで辞書を引いたり、あちこち電話をかけたりして、記事に誤りがあれば正す仕事をしている。それ自体は立派な仕事だけれど、本人にとっては望まない仕事なので、つらい日々を送っている。私はこの映画を見た頃、ちょうど翻訳会社の営業部でやはり望まない仕事をし、つらい日々と送っていた。自分と主人公を重ねてしまったわけだ。

同時に、主人公が働く校閲部のオフィスに心惹かれてしまった。映画を見ていると、自分がそこにいて、日々を送っているように感じる。その場の空気が心地良い。それを味わえると思うだけでまた映画を見たくなる。オフィスに備え付けられているサーバーからでっかいマグカップに注がれるコーヒーが妙に美味しそう。ある朝、遅刻した主人公がそのコーヒーを一口飲みながら上目づかいであたりを見回すシーンを見ていると自分がその立場にいるような気がする。

ストーリーが面白いとか、何かを考えさせられるとか、そういうのではなく、場の雰囲気が好きで、そこに行きたいからという理由だけで好きになる映画もあるのだよな。