読む行為

面白い話を読みたくて本を読んでいるわけではないし、何かについて考えたり、感慨にふけりたくて本を読んでいるわけでもない。感動したいわけでもない。笑いたいわけでも泣きたいわけでもない。そういうことにだんだんと気づいた。

もちろん、面白ければ嬉しいし、本を読んで考えたり感慨にふけることも、大笑いすることも泣くこともある。それが本を読む楽しさを倍加させることはある。でも、一番の楽しみはそこにはない。

私はどうも、文章を読むという行為そのものが好きで本を読むらしい。読むことの快楽だ。他のことはすべて副産物。副産物が豊かなほど読む行為をたくさん長く続けられるからありがたい。いわば主食とおかずのような関係。

本を読んだ感想、本の紹介などを聞いていてなんか違和感を覚えることが多いのはそのためだろう。この本を読む体験そのものが快いかどうかそこが一番大事なので、ストーリーが良いとか、主人公のキャラクターがとか、新しい知見が得られるとか、どうでもよくはないけど二の次くらいのことなんだよね。強いて言えば大事なのは語り口。You know what I mean?